年金定期便や年金証書に年金支給額の数字が印刷されていますが、これってどうやって計算しているのでしょうか。
計算方法の詳細は日本年金機構のホームページにすべて書いてあるはずですので、自分でも計算してチェックできるだろうと思いました。
ところが、日本年金機構のホームページの計算式を当てはめても合いません。
そこで、はっきりしない箇所は年金事務所に聞くことで解決できました。
その結果、年金定期便や年金証書に記載の年金額を自分で計算チェックできました。
忘れないうちに年金額の計算チェック方法をまとめましたので参考にして下さい。
私の場合、今年の3月(63歳)から報酬比例部分の年金を受け取っています。
老齢基礎年金は65歳から受給予定です。
62歳は雇用保険受給のため年金停止でした。
公的年金について
公的年金について、厚生労働省がまんがで分かりやすくした説明がありますので見て下さい。
公的年金制度が将来も破綻せずに続く理由が説明されています。
これは、今話題の『マクロ経済スライド』というものですね。
昔は賃金や物価が高くなると、年金もそれに合わせて受給額が増えたそうです。
『マクロ経済スライド』導入後は、現役世代の年金保険料負担が重くなりすぎないように
年金の給付水準を自動的に調整するようです。
少子高齢化が進むと、賃金や物価が高くなっても年金受給額が減らされるのですね。
年金定期便
年金定期便のサンプルです。サンプルは平均的な年金額に置き換えています。
サンプルの年金加入期間は477月。
62歳から年金受取額が報酬比例部分のみの支給で約106万円。
65歳からの年金受取額が老齢基礎年金の765,473円と報酬比例部分の約106万円と経過的加算部分の10,129万円の合計が約183万円となっています。
このサンプルの年金受取額がどうやって計算されたのでしょうか?
この後、計算方法を順に説明したいと思います。
なお、年金定期便の2ページ目に、これまで支払った年金保険料の合計が記載されています。
サンプルではなく、私の年金額の場合、保険料の合計を年金額で割ると、年金を8年以上受け取れば支払った保険料より多くもらえることになります。65歳からだと、65+8 = 73歳で元がとれる計算になります。現在、年金は積立方式ではありませんが、参考に計算してみました。
年金証書
私の場合、年金請求手続きを近くの信用金庫にお願いしました。信用金庫の方が書き方を教えてくれますので、年金事務所での手続きもすべておまかせで楽でした。年金はその信用金庫に振込みすることになります。
年金証書です。
報酬比例部分(厚生年金部分)のみが記入されています。2年後に支給の老齢基礎年金(国民年金部分)の欄には年金額の記入がありません。
年金決定通知書・支給額変更通知書
年金決定通知書・支給額変更通知書のサンプルです。
サンプルの場合、報酬比例部分の年金額は1,055,564円です。
年金額改定通知書と年金振込通知書
年金額改定通知書と年金振込通知書のサンプルです。
年金額は物価や賃金の変動等により改定されます。
今年は、0.1%プラス改定されました。
今回は増えましたが、これから少子高齢化の進行でどうなるかわかりません。
年金振込通知書には、来年の2月までの年金振込額が記載されています。
来年の2月の所得税額の欄をみると19,401円(私の場合)と超高額になっています。
これはボッタクリです、年金ダイヤルに問合せたところ、私の場合、去年雇用保険受給により年金支給停止になっていて、扶養親族等申告書が提出されていないため、高い所得税額になっているとの回答でした。
今年の秋に送られてくる扶養親族等申告書に記入し提出すれば、来年2月からの所得税額は激減するようです。
⇒ 日本年金機構ホームページ『扶養親族等申告書の記入方法のポイント』
これは恐ろしいです、毎年、扶養親族等申告書を提出しないと高額な所得税が年金から引かれてしまいます。
⇒ こちらの記事も見て下さい、『初めて年金の扶養親族等申告書を記入し提出!これで年金の手取りが減額されないのでひと安心』
65歳から支給の老齢基礎年金額の計算チェック
いよいよ、65歳から支給される私の老齢基礎年金額 765,473円の計算チェックを行います。
計算式は、日本年金機構のホームページ『国民年金(老齢基礎年金)』から、式を簡略化すると、
となります。
老齢基礎年金は、20歳から60歳未満まで年金保険料を40年間納めると、65歳から老齢基礎年金が満額780,100円(平成31年4月から)支給されます。
サンプルの年金定期便をみると年金保険料を477月間納付していますので、
780,100円 x 477月 ÷ (40 x 12) =775,224円となり、年金定期便の『765,473円』と合いません。
よく調べてみると、60歳以降に納めた6ヶ月間は保険料納付月数には入らないことがわかりました。
確かに、20歳から60歳までの加入期間なら、477月ー6月 = 471月となります。
計算し直すと、
780,100円 x 471月 ÷ (40 x 12) =765,473円となり、年金定期便の『765,473円』と合いました。
この計算に入らない6ヶ月間の年金はどうなるのか調べてみると、どうも年金定期便の経過的加算部分の10,129円にて追加されているようです。
この経過的加算部分の金額の計算チェックは以下を見て下さい。
経過的加算部分の金額の計算チェック
65歳から支給される年金定期便(サンプル)に記載された経過的加算部分の金額は10,129円です。
経過的加算部分の金額の計算式は、日本年金機構のホームページ『老齢基礎年金』から、記号を使用して簡略化すると
平成31年度 1,626円 x K x M ー 780,100円 x ( N ÷ 480 )
K : 生年月日に応じた率(平成31年度) M:厚生年金保険の被保険者月数
N:20歳〜60歳未満の厚生年金保険の被保険者月数
780,100:老齢基礎年の満額 480:20歳から60歳までの加入可能月数 (20年x12月)
注) 令和2年度は、1,630円 x K(令和2年度) x M ー 781,700円 x (N ÷ 480)
となります。
計算式に私の条件を当てはめてみます。
生年月日に応じた率(K)は1.0、厚生年金保険の被保険者月数Mは、年金定期便から477月、
20歳から60歳未満の厚生年金保険の被保険者月数Nは、471月(60歳以上6ヶ月あり)です。
1,626円 x 1.0 x 477 ー 780,100円 x (471 ÷ 480 ) = 775,602 ー 765,473 =10,129円
これは、年金定期便に記載された金額と一致しました。
報酬比例部分の年金額の計算チェック
62歳から支給される年金定期便(サンプル)に記載された報酬比例部分の金額は1,055,564円です。
サンプルの条件では、報酬比例部分の金額の計算式は、日本年金機構のホームページ『老齢基礎年金』から、
( H1 x 0.0075 x M1 + H2 x 0.005769 x M2 ) x 0.998
H1:平均標準報酬月額 (平成15年3月まで)
M1:厚生年金保険の被保険者月数 (平成15年3月まで)
H2:平均標準報酬月額 (平成15年4月以降)
M2:厚生年金保険の被保険者月数 (平成15年4月以降)
となります。
係数の0.998は、年金額改定時に変更されます、以前は0.997でした。
この式に当てはめる数字は、『年金決定通知書・支給額変更通知書』に記載されています。
平成15年3月までの年金保険加入月数(M1)は287月、平均報酬月額(H1)は300,000円です。
平成15年4月以降の年金保険加入月数(M2)は161月、平均報酬月額(H2)は400,000円です。
さらに、平成15年3月までの厚生年金基金の加入月数は29月、平均報酬月額は120,000円です。
これらの数字を計算式に当てはめようとしたところ、29ヶ月だけ加入していた厚生年金基金の分をどのように計算してよいかわかりません。
そこで、年金事務所に問合せてみたところ、以下のように計算することが分かりました。
{ H1 x 0.0075 x (M1+M3) + H2 x 0.005769 x M2 } x 0.998 ー H3 x 0.007125 x M3
H1:平均標準報酬月額 (平成15年3月まで)
M1:厚生年金保険の被保険者月数 (平成15年3月まで)
H2:平均標準報酬月額 (平成15年4月以降)
M2:厚生年金保険の被保険者月数 (平成15年4月以降)
H3:厚生年金基金の期間の平均標準報酬月額 (平成15年3月まで)
M3:厚生年金基金の被保険者月数 (平成15年3月まで)
{300,000円 x 0.0075 x (287+29)+400,000円 x 0.005769 x161 } x 0.998ー120,000円 x 0.007125 x 29
= (711,000+371,524) x 0.998 ー 24,795円
= 107,998 ー 24,795 = 1,055,564円
これは、年金定期便の報酬比例部分の記載金額1,055,564円と一致します。
この計算は、厚生年金加入期間の受取年金額から厚生年金基金加入期間の受取年金額(基金代行部分)を引いています。
⇒ 詳しくは、日本年金機構ホームページの『厚生年金基金加入期間がある人の年金』を見て下さい。
引かれた厚生年金基金の受取年金額は、私の場合、企業年金連合会から支給されました。
まとめ
年金定期便や年金証書に記載してある年金額をすべて自分で計算チェックできました。
やはり、自分で計算してみると、こうやって年金額が計算されるんだと納得ができました。
日本年金機構の計算が間違うことはないと思いますが、チェックできて安心しました。
この数字は、これから老後に受け取るお金の数字ですから、自分で確認しておきたいですね。
今回の年金額の計算チェックで気になったのは、物価や賃金の変動、現役世代の負担能力に応じて年金額が改定されることです。
⇒ 日本年金機構ホームーページ『年金額の改定ルールの見直し(令和 3 年 4 月~)』
この内容を見ると、年金制度を持続させるために、現役世代の負担能力が低下すれば年金額が減額改定されるようです。
ということは、今後、少子高齢化によりもらえる年金が減っていくのでしょうか。
⇒ 今回の年金額の計算チェックをエクセルで可能です。必要な方はダウンロードして下さい。